Kerasでモデルを学習させるときに最もよく使われるメソッドが、model.fit()です。
「fitって何をしているの?」「バッチサイズや学習率はどう決めるの?」と疑問を持ったことはないでしょうか?
この記事では、model.fit()の仕組み・主な引数・学習の流れ・精度を上げるコツをわかりやすく解説します。
model.fit()とは
model.fit()は、Kerasモデルを訓練(トレーニング)するための基本関数です。
指定したデータとラベルを使って、損失関数を最小化するようにモデルの重みを自動で更新します。
model.compile(optimizer='adam', loss='sparse_categorical_crossentropy', metrics=['accuracy'])
history = model.fit(x_train, y_train, epochs=10, batch_size=32, validation_data=(x_test, y_test))
上記のコードを実行するだけで、以下の処理が自動的に行われます。
- 順伝播(入力データから予測を計算)
- 損失関数による誤差の算出
- 逆伝播(勾配計算と重み更新)
- 精度(accuracy)などのメトリクスを表示
つまり、「モデルの学習ループを自動で回してくれる便利な関数」がfit()です。
主な引数(パラメータ)
| 引数 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
x | 入力データ(NumPy配列やTensor) | x_train |
y | 正解ラベル | y_train |
epochs | 学習データ全体を何回繰り返すか | 10 |
batch_size | 1回の更新に使うデータ数 | 32 |
validation_data | 検証データ(精度確認用) | (x_test, y_test) |
callbacks | 学習率調整や早期終了を行う機能 | ReduceLROnPlateauなど |
補足: callbacks は学習過程を制御するための重要な引数です。
代表的なコールバックには以下のようなものがあります:
ReduceLROnPlateau:性能が頭打ちの際に学習率を減少EarlyStopping:精度が向上しなくなった時点で学習を自動停止ModelCheckpoint:エポックごとにモデルを自動保存TensorBoard:学習過程を可視化
これらを活用することで、過学習防止や効率的な学習が可能になります。
🔍 model.compile()とは ― 学習の「設計図」を作る工程
model.fit()を実行する前に、Kerasではまず
model.compile()を呼び出して「モデルがどのように学習するか」を定義します。
これはちょうど「どんなルールで成績をつけるか」を決めるようなものです。
学習の実行役がfit()だとすれば、compile()はその前の「作戦会議」です。
- optimizer: パラメータをどのように更新するか(例:Adam, SGDなど)
- loss: どの誤差を最小化するか(例:MSE, categorical_crossentropyなど)
- metrics: 学習の進み具合をどの指標で評価するか(例:accuracyなど)
これらを設定してはじめて、model.fit()が「何を最適化すべきか」を理解し、学習を開始できます。
バッチサイズと精度の関係
バッチサイズ(batch size)は、学習の安定性と精度に大きく影響します。 大きなバッチサイズ(例:128以上)では計算が速くなりますが、損失関数が安定しすぎて汎化性能(テスト精度)が下がることがあります。 逆に小さいバッチサイズ(例:16〜64)では学習が不安定になりますが、結果的により高い精度を得られることもあります。
実践的には、32〜64程度から始めて、GPUメモリや精度を見ながら調整するのがおすすめです。
学習率(learning rate)とAdam最適化
optimizer(最適化手法)に指定する「Adam」は、多くのタスクで高い性能を示す人気のアルゴリズムです。 ただし、学習率(learning rate)が不適切だと精度が大きく変わります。
optimizer = tf.keras.optimizers.Adam(learning_rate=0.001)
model.compile(optimizer=optimizer, loss='mse')
- 学習率が大きすぎる → 損失が発散する
- 学習率が小さすぎる → 収束が遅い
fitでは、学習率を動的に変えるコールバックも利用できます:
from tensorflow.keras.callbacks import ReduceLROnPlateau
callback = ReduceLROnPlateau(monitor='val_loss', factor=0.5, patience=2)
model.fit(x_train, y_train, epochs=20, validation_data=(x_test, y_test), callbacks=[callback])
これにより、精度が頭打ちになったとき自動で学習率を下げ、より良い結果を得やすくなります。
model.fit()内部の動作イメージ
model.fit()の内部では、以下のような流れで学習が進みます。
- 各バッチを順番に取り出す
- 予測値(forward pass)を計算
- 損失を算出
- 勾配を計算(backward pass)
- オプティマイザ(例:Adam)で重みを更新
このループを指定したエポック数だけ繰り返し、損失が減少していけば学習成功です。
精度を上げるためのポイント
- 学習率を適切に設定(0.001〜0.0001程度が目安)
- バッチサイズを32〜64で調整
- 過学習対策にドロップアウトや早期終了を導入
- データの前処理(正規化・シャッフル)を忘れない
まとめ:まずはmodel.fit()を理解しよう
model.fit()は、Kerasで最も基本的で強力なトレーニング手段です。
学習の流れを自動化してくれるため、初心者が最初に習得すべき関数といえます。
まずはfitを使ってモデルの基本を理解し、慣れてきたらGradientTapeなどの応用へ進みましょう。

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