【Keras入門】model.fit()とは?仕組み・使い方・パラメータ設定をやさしく解説

投稿日:2025年11月9日日曜日 最終更新日:

Adam Google Colab Keras model.fit()

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Kerasのmodel.fit()の仕組みと使い方を図で説明している画像

Kerasでモデルを学習させるときに最もよく使われるメソッドが、model.fit()です。 「fitって何をしているの?」「バッチサイズや学習率はどう決めるの?」と疑問を持ったことはないでしょうか? この記事では、model.fit()の仕組み・主な引数・学習の流れ・精度を上げるコツをわかりやすく解説します。


model.fit()とは

model.fit()は、Kerasモデルを訓練(トレーニング)するための基本関数です。 指定したデータとラベルを使って、損失関数を最小化するようにモデルの重みを自動で更新します。

model.compile(optimizer='adam', loss='sparse_categorical_crossentropy', metrics=['accuracy'])
history = model.fit(x_train, y_train, epochs=10, batch_size=32, validation_data=(x_test, y_test))

上記のコードを実行するだけで、以下の処理が自動的に行われます。

  • 順伝播(入力データから予測を計算)
  • 損失関数による誤差の算出
  • 逆伝播(勾配計算と重み更新)
  • 精度(accuracy)などのメトリクスを表示

つまり、「モデルの学習ループを自動で回してくれる便利な関数」がfit()です。

主な引数(パラメータ)

引数説明
x入力データ(NumPy配列やTensor)x_train
y正解ラベルy_train
epochs学習データ全体を何回繰り返すか10
batch_size1回の更新に使うデータ数32
validation_data検証データ(精度確認用)(x_test, y_test)
callbacks学習率調整や早期終了を行う機能ReduceLROnPlateauなど

補足: callbacks は学習過程を制御するための重要な引数です。
代表的なコールバックには以下のようなものがあります:

  • ReduceLROnPlateau:性能が頭打ちの際に学習率を減少
  • EarlyStopping:精度が向上しなくなった時点で学習を自動停止
  • ModelCheckpoint:エポックごとにモデルを自動保存
  • TensorBoard:学習過程を可視化

これらを活用することで、過学習防止や効率的な学習が可能になります。

🔍 model.compile()とは ― 学習の「設計図」を作る工程

model.fit()を実行する前に、Kerasではまず model.compile()を呼び出して「モデルがどのように学習するか」を定義します。

これはちょうど「どんなルールで成績をつけるか」を決めるようなものです。 学習の実行役がfit()だとすれば、compile()はその前の「作戦会議」です。

  • optimizer: パラメータをどのように更新するか(例:Adam, SGDなど)
  • loss: どの誤差を最小化するか(例:MSE, categorical_crossentropyなど)
  • metrics: 学習の進み具合をどの指標で評価するか(例:accuracyなど)

これらを設定してはじめて、model.fit()が「何を最適化すべきか」を理解し、学習を開始できます。

バッチサイズと精度の関係

バッチサイズ(batch size)は、学習の安定性と精度に大きく影響します。 大きなバッチサイズ(例:128以上)では計算が速くなりますが、損失関数が安定しすぎて汎化性能(テスト精度)が下がることがあります。 逆に小さいバッチサイズ(例:16〜64)では学習が不安定になりますが、結果的により高い精度を得られることもあります。

実践的には、32〜64程度から始めて、GPUメモリや精度を見ながら調整するのがおすすめです。

学習率(learning rate)とAdam最適化

optimizer(最適化手法)に指定する「Adam」は、多くのタスクで高い性能を示す人気のアルゴリズムです。 ただし、学習率(learning rate)が不適切だと精度が大きく変わります。

optimizer = tf.keras.optimizers.Adam(learning_rate=0.001)
model.compile(optimizer=optimizer, loss='mse')
  • 学習率が大きすぎる → 損失が発散する
  • 学習率が小さすぎる → 収束が遅い

fitでは、学習率を動的に変えるコールバックも利用できます:

from tensorflow.keras.callbacks import ReduceLROnPlateau

callback = ReduceLROnPlateau(monitor='val_loss', factor=0.5, patience=2)
model.fit(x_train, y_train, epochs=20, validation_data=(x_test, y_test), callbacks=[callback])

これにより、精度が頭打ちになったとき自動で学習率を下げ、より良い結果を得やすくなります。

model.fit()内部の動作イメージ

model.fit()の内部では、以下のような流れで学習が進みます。

  1. 各バッチを順番に取り出す
  2. 予測値(forward pass)を計算
  3. 損失を算出
  4. 勾配を計算(backward pass)
  5. オプティマイザ(例:Adam)で重みを更新

このループを指定したエポック数だけ繰り返し、損失が減少していけば学習成功です。

精度を上げるためのポイント

  • 学習率を適切に設定(0.001〜0.0001程度が目安)
  • バッチサイズを32〜64で調整
  • 過学習対策にドロップアウトや早期終了を導入
  • データの前処理(正規化・シャッフル)を忘れない

まとめ:まずはmodel.fit()を理解しよう

model.fit()は、Kerasで最も基本的で強力なトレーニング手段です。 学習の流れを自動化してくれるため、初心者が最初に習得すべき関数といえます。 まずはfitを使ってモデルの基本を理解し、慣れてきたらGradientTapeなどの応用へ進みましょう。

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